
サガミヤの食事はバイキングスタイルだ。文は六時オープンと同時にレストランへ入った。
好きなテーブルを選んでから食事やドリンクを取りに行く。夕食時もアルコールのサービスがあった。
風呂上がりにビールは飲んでいたので、文は一杯目から酎ハイを選んだ。まずはツマミになりそうなものを見繕って自分のテーブルに運ぶ。伊豆というお土地柄から海の幸、山の幸が並んでいる。

七時を回った頃、奥のライブキッチンで握られた寿司を数貫つまむと、文はもう満腹だった。デザートの種類も多かったが、文はみかんのゼリーだけで止めておくことにした。その代わりというわけではないが、最後にオレンジサワーも飲む。
ほろ酔いを醒まそうと、食後は海辺の遊歩道に出てみることにした。一旦部屋に戻り念のため上着を羽織る。外に出てみると、やはり海からの風が少し冷たかった。さざ波の音にしばし耳を傾ける。文は浜には降りず遊歩道を戻った。
「柏木様!」
ロビーに入ったところで、文はフロントの係員に呼び止められた。
「お客様です、あちらでお待ちです」
誰だろう、示された方を見ると二人の男性が椅子から立ち上がり文へと頭を下げた。
「柏木文さんですね?静岡県警の高田と申します」
「荒川です」
二人は警察手帳を見せながら名乗った。
「何か?」
悪いことをした覚えはないが、文は一瞬緊張した。まさか家に残してきた幸太郎に何かあったのか。
「ご旅行中に申し訳ありませんが、急いでお尋ねしたいことがあって夜分に参りました」
「なんでしょう?」
「東洋トラベルの若林光雄さんをご存知ですか?」
「はい。ちょうど今日も東京駅でお会いして一緒に伊東へ来ましたけれど、若林さんがどうかされたんですか?」

文が若林と一緒だったと答えると二人の刑事は明らかに落胆の色を見せた。



